社員レポート


草野 裕樹

月報(2011/07)

 今年の夏の不動産需要は例年とはちょっと異なった反応を見せている。毎年この時期になると不動産の動きは弱まり、緩やかな衰退曲線を描くのが通常だと思うが今年は緩やかな上昇曲線を描きつつあると思う。その背景にあるものは何だろうか。

 今年は3月に発生した震災の影響で多くの物を被災し、失った。それは人命であり、建物であり、資源である。多くのものを失い、未だに不安な動きを見せる原発が大きな影を落とす。夏になると本州以南の場所においては暑さ対策でクーラーを使用したり、冷凍食品など熱に弱いものを保存するために多くの電力を消費するが今年はそれもままならなくなってきている。今年は節電の夏だからである。政府も推奨するように電力は極力抑えられるように配慮をしなければ今年の夏は電力不足により大変なことになる可能性すら秘めている。実際今年の熱中症の死者数は、近年まれにみる暑い夏と言われた昨年を大きく上回り、その猛威ぶりを見せ始めている。また、その電力節約の影響は経済活動にも大きく影響し回復基調を見せ始めていた日本経済にも大きなダメージを与えることが素人の目でもわかる状態である。

 そのような状態の中で注目されるのがクーラーを使用しないような場所への避暑だったり、電力消費制限のない場所への移動である。都心から近い場所でいけば軽井沢だったり信州だったり多くの候補はあるだろう。しかし本州は電力節約が付き纏う。そうした電力不安を抱えたままの中では充分な避暑とまではいかない可能性が出てくる。そうした状況とは打って変わって北海道については電力の供給不足の心配もなく、日中はある程度気温が上がることはあるだろうか湿気の少ない地域という事もありエアコン自体必要がない可能性もある場所だ。しかも先述の通り北海道は、節電は心がける必要はあっても電力不足になる恐れはないので快適な生活を送ることが出来ることが、容易に想像が付く。そうした状況がこの暑い夏を目前に都心を中心にささやかれ始め、夏休みを前に3カ月程度の滞在を主とした需要が伸びてきているのである。また、最近になり経済活動にあまりダメージの少ない北海道経済を見込んでか本州からの人員移動も増加しているのか企業や団体などの家具付き物件に対する法人契約も伸びてきている。販売においても夏の間は自分で利用し、その後に投資に回すために購入するという新たな需要も出てきている。

 今年は日本全体を通して若干自粛感が漂っていたが、夏の暑さを前にして今までになかった需要がここ札幌に押し寄せているのかもしれない。逆にいえば新たな動きが目の前にあるのだから、いろいろなパターンの不動産需要に対しての供給方法を実践できるいい機会なのかもしれない。札幌だからこそできる不動産供給形態というのももしかしたら生まれるかもしれない。夏の暑さは厳しいものがあるだろうが、その厳しさにこそ新たなチャンスはあるのかもしれない。