社員レポート


草野 裕樹

金融不安下での投資

 昨年秋口から始まった金融不安は一気に飛び火し、金融関係の業種はもとより製造業、サービス業にまで及んでいる。連日テレビなどで放送される「派遣切り」の発端もこの金融不安にある。今回の不況の震源はアメリカサブプライムローンと大手証券会社の破たん、オイルマネーを左右していた投機的資金の撤退に影響されている。現在世界各地で失業と景気対策の手だてが打たれてきているが、反応は鈍く特効薬的な解決策は見いだせないでいるのが現状である。

 この不安はマンション業界も対岸の火事ではない。金融不安によって多くの労働者の収入が不安定となれば、ローンや家賃を払えない状況や強制的な力によって自分の住処を失いということも発生する。このことは正に不経済そのものであり、価格の下落助勢・取引の不安定化をもたらす危険性がある。

 身近な話でいえば、昨日まできちんと家賃等を払えていた入居者が、仕事がなくなったため滞納が始まり、ついには支払いの目途が立たなくなり退去・・・という状況もあるであろう。実際に昨年末までに「家賃が払えきれないので退去する」や「務めていた会社を辞めたので家賃が遅れる」などの状況が見えてきている。

 「金融的な不安」→「会社などに資金が回りにくくなる」→「労働者に支給される金額が減る」→「買い控えが起きる」→「小売業に資金が回らず不安が広がる」・・・といった具合に連鎖が起き、同じ動作が繰り返し起きる状況下に突入しつつあるのが現状であるが、これは不動産業でも全く同じ動きをする。商品が不動産(売買・家賃等)か否かという違いだけで実質的なものは変わらない。

 ではこのような時期、どのようなことをすべきなのだろうか?

 実際資金を動かす側にとっても出費は痛手であり、来る支出へ向けある程度のストックとしておきたいというのが本音であろうが、そこを積極姿勢で乗り切るのがチャンスなのではないだろうか?例えば、マンションの売買について現状下においては、販売戸数が伸び悩んでいるため普段よりも価格が安価である可能性が高い。そこにおいて普段では出ない金額において購入を行う・販売することにより資金が流動し始める。この流れの中で売る側は資金を入手でき、買う側は安価な値段で購入できるため余剰資金を他の支出へ振り分けが可能となり。これを繰り返すことで流動性が生まれ弾みが出る可能性があるのではないだろうか?実際そんなにうまくいくものではないが、事実、不動産販売においては価格が下落しているため買う側にとっては大きなチャンスであるし、借りる側にしても交渉しやすくなる。資産を処分したい側にしても金額を間違えなければある程度の需要は見込めるのではないだろうか?市場原理は買い手と売り手の需給バランスに原理する。よって動きが止まることは決してあり得ないのである。不況の時にこそ、チャンスはあるのではないだろうか?